「花咲ジジイ」

昔々ある山谷ブルースを聴きながらジジイとババアがいました。
もう一組、ジジイとババアがいました。
きゃんきゃん、野良犬は二足歩行です。
そんな野良犬は、いずれかのジジイとババアに訳もなく助けられました。
そして野良犬はある日、ジジイを担ぎ上げ、二足歩行で山のてっぺんまで登り抜き、
「ここほれ、わんわん、ここほれ、わんわん」
と喋るのです。もはや犬ではありません。
でもしかし、ジジイはその犬らしい何かに言われたとおり、仕方なく土を掘ってみます。
すると、なんということでしょう。
口から愚痴が出てくるではありませんか。
「何でこんなことをしなきゃならんのじゃ」
二足歩行のエセ犬は、周知の通りただの犬ではなかったのです。
ジジイは犬をホゴしようと思いました。
土を掘ったところへ、犬を何事もなかったように埋葬します。
そして隠蔽工作のため、埋めた部分に木を植えると、なんということでしょう。
100年あまりで大木へとすぐ成長する見込みのようです。
そして、その木はさほど大きくない状態で、木偶にも二足歩行を覚えたのです。
ひょっとしたら着ぐるみを変えたのかもしれません。
ある日、ジジイの夢に犬らしい何かが登場しました。そして優しく、そっと、こう耳元でささやくのです。
「ここほれ、わんわん、ここほれ、わんわん」
もはや悪夢でした。
さらに物の怪は続けます。
「お前にあの木が救えるか」
ジジイは居ても経ってもいられなくなり、あの木を臼に変えて餅を作ってみました。
すると、なんということでしょう。
口から愚痴が出てくるではありませんか。
「何でこんなことをしなきゃならんのじゃ…」
ジジイは地味に腰を痛めました。
後日、ジジイは犬らしいものの呪縛から逃れるため、自分の犯した事への反省も踏まえ、あの木があった周りに塩をまこうと考えたのでした。
もちろん博多の塩です。
しかし、シナリオに準じるため、敢えて灰をまきました。
すると、なんということでしょう。
ジジイは赤坂で灰をまいていたようで、そこには既に満開の桜の花が咲いていたとのことです。

ハナサカサカス。そろそろ春ですね。