「ハトーという名の男」

戦士「ハトー」とその子どもの話。
昔、ロシアでは村人を突然襲いかかっては食料などをかっぱらい、抵抗する村人には暴力をも振るうような悪党ゴブリンが棲んでいた。
そんなゴブリンに悩む村人達は、護衛のため戦士を10人ほど町から雇い始めた。その中の一人が今回の主役ハトーである。
アメ色に焼かれた肌に、鍛え抜かれた筋肉で盛り上がる腕っぷし、しかし中身はしなやかで甘みのあるキャラクター。そして完璧な歯ごたえ。ハトーはまるでキャラメルコーンのような男だった。
ハトーは働き者で、一般のゴブリン退治率が1.2匹/日だとしたら、ハトーはなんと0.78匹/日だった。
頑張っている姿はよく見受けられるのだが、なかなか結果に結びつかないかわいそうなタイプである。
また、よく東から現れ、ゴブリンをたまに退治してはよく東へ帰って行く姿を見られていたので、巷では東のハトー(略して東ハト)と呼ばれていた。
そんなハトーには一人の息子がいた。その子は葉と尾を使ったタヌキごっこが大好きだった。
そして、たまにゴブリンの子と遭遇すれば、ゴブリンの子は喜んで遊び、そのゴブリンの親は情けあってか村を襲わずに帰ることもあったのだ。
具体的に、ハトーの子が好きで常備するリンゴプリンを小ぶりゴブリンに分け与えては、小ぶりゴブリンはすこぶるゴキゲン小ぶりゴブリンになり、プリンプリンしたリンゴプリンにぶりっこぶりながら、いつも村を襲っちゃってゴブリンね、と小ぶりゴブリンが言うような流れである。
そんなハトー坊主の姿を見た者は、良いハトー坊(イーハトーボ:下北沢の喫茶店の名前)だと言い伝えようとする者もちょっといた。
だがしかし、いたずら好きのハトーの子、狸寝入りはその子にとってオハコであり、一番楽しいと思えた遊びである。この遊びで村人達に迷惑をかけることがあったのだ。
どのような遊び方をしていたかというと、森中の道端で大人Aが遠くから歩いてくるのを見かけては、大人Aに見つかる前に道端で狸寝入りをするという遊びである。
倒れた子を見た大人Aは、ゴブリンにやられたのか、と驚き村人達に報告する。
だが次の日になると、ハトーの家で何事も無かったかのようにリンゴプリンを食べている姿を村人達は見て、迷惑なものだ、と道端の大人Aを信じなくなったのだった。
まるでオオカミ少年のように。
大人Aは村にいるのが気まずくなった。
「おお、神よ」とつぶやきながら。

それだけである。
さて、そんないたずら好きなハトーの子は、いつしかリンゴプリンばかり食べていたので、村人達からはゴブリンの手下なのではないかという疑いをかけられ始めたのだ。
理由として、プリンプリンした食感のプリンに、シャキシャキ感の強いリンゴを入れたところで、どう考えてもミスマッチだったからだ。
とても人が食うものではない=ゴブリンという安直な意見一致の結果、狸寝入りをしているところを大人B以降らが毒リンゴとプリンを分けてそばに置き、それをハトーの子は見つけては食べて死んでしまった。
数時間が経ち、ゴブリン退治に明け暮れていたハトーは、東の方向から現れ息子を見つける。息の無い姿にハトーは生きる希望を大きく失ってしまった。
これからどうやって生きていこう。誰がこんなことを…
せめて息子と同じ場所へ行きたい。
そう思いながらハトーがその子を抱きかかえると、なんと体の周りから神々しい光を放つ。
そして最終形態になり、ハトーと子が合体しハト男になったのだった。

フィクションです。

(参考文献)・オオカミ少年