「メリークリスマス」

大豪邸の庭にキリンさんがいます。
首を長くして待っているようですが、一体何を待っているのでしょうか。
おっと、飼育員が餌を持ってきました。
なるほど、キリンさんは餌を待っていたんですね。
しかし、キリンさんは餌を食べ終えても首を長くして待っています。
一体何を待っているのでしょうか。
おっと、キリンさんのお尻からドデカいババが。
なるほど、キリンさんは排泄がしたかったんですね。
しかし、キリンさんはまだ首を長くして待っています。
キリンさんは何を期待しているのでしょうか…
…夜も深まり、今日はサイレントナイトです。一人の男性が音楽とともにキリンさんの隣に現れました。

……シャンシャンシャン、シャンシャンシャン♪
シャンシャンシャン、シャンシャンシャン♪……
「真っ赤なお鼻の隣のおじさん〜、いつもみんなのまがい者〜
でもその年のクリスマスの日〜
隣のおじさんは言いました〜
暗い夜道はピカピカのお家の部屋に忍び込むのさ〜
いつも泣いてた隣のおじさん〜
今宵こそはと覚悟を決めました〜♪」

隣のおじさんはなんと、サンタクロースではなく、ただのコソ泥のクソ野郎でした。
みそ汁を飲む価値もありません。
そして早速キリンさんの首を使って隣の家の煙突から忍び込んだのです。
なるほど、キリンさんの首は煙突に昇るためのハシゴ役のようなものとして貢献されたかったのですね。
しかし、キリンさんはまだ首を長くして待っていたようです。
キリンさんは何を期待しているのでしょうか。
その頃、クソ野郎は煙突のてっぺんに登りきった直後に、足場を踏み外して落ちて尻もちをついていたようです。
しかし夜もすっかり更けていたので、この家に棲む住人も、変なおじさんの尻もち程度の音では気付きませんでした。
変なおじさんは大きな袋を用意しておりました。
この中に、子ども達が親からもらったプレゼントをたっぷり詰め込んで、そして質屋で売ってしまおうと考えていたのです。
チキンを食べる価値もありません。
ところで、この変なおじさんの普段の仕事はひよこの鑑別作業です。
毎日のルーチン作業に嫌気がさしたので、一発ドカンと稼いでプラハへ1週間ほど海外旅行することが夢でした。
しかも有給休暇を使って。
おじさんは子供部屋に侵入し、子供の寝顔を確認したら、すぐ傍のプレゼントを取って袋に詰めて煙突を登り抜け出し、次いで二軒目の家もキリンさんを使って煙突から侵入し、プレゼントを取っては手際良く回収し、50軒ほどの家からプレゼントをかっさらってきたのでした。なので袋はパンパンです。
無事ミッションコンプリートし、家に着いたらホッとひと息つき、冷えた体を温めるべく、みそ汁をすすりました。
そして、封に包まれたプレゼントの中身を確かめるべく、早速一つ目のプレゼントを開けてみました。
するとなんということでしょう。
おじさんの頬を伝って涙が流れるではありませんか。
1粒、2粒、3つマングローブ…

おじさんは、小学校3年生のときに買ってもらった、シルバニアファミリーオシャレなお家セットから開けてしまったのです。
「僕は何てことをしてしまったのだろう。子ども達の大事な夢をこんな僕みたいな者が奪ってしまおうとしてしまって…みそ汁を飲む価値も無いよ…」
そう思い、隣のおじさんは自分のプラハの夢と引き換えに、子ども達の夢を戻すべく、外に野放しにしていたキリンさんにまたがり、プレゼントを返すことにしたのです。
なるほど、キリンさんはご主人の帰りを待っていたんですね。
しかし、まだキリンさんはこれに飽きたらず首を長くしておりました。どうしたことでしょう。
そして、夜も明けるギリギリの5時頃ではありましたが、なんとか変なおじさんは50軒の家にプレゼントを戻すことができました。
しかし時間があまりなかったので、ランダムに返してしまいました。
朝になり、このサンタクロースまがいの変なおじさんを空寝しながら見た子ども達の中には、
「ホントにサンタさんっていたんだね!!」
と親に嬉しそうに話す子もいたらしいとか。
親としては、プレゼントで気持ちが舞い上がり、夢でも見たのだろうと考えておりました。
しかし、プレゼントはPS Vitaを買ったはずだったのに、何故か干物セットになっていたことに悩む親もいたとのことです。